Memory Organization of Action Events and Its Relationship to Memory Performance

Koriat, A., & Pearlman-Avnion, S.

Journal of Experimental Psychology: General 2003. Vol.132, No.3, 435-454

 

要約

先行研究において自己の行為事象に関する記憶の体制化について,異なる見解が得られていた.本研究では,課題によって体制化の方法が異なることを調べた.学習時とテスト時において実演すると運動的体制化が行なわれ,言語するとエピソード的体制化が行なわれた.また,実演効果として発生よりも再生量も正確さも上回った.反復学習により,実演条件では運動的体制化の再生量や正確さが,言語条件ではエピソード的体制化の再生量や正確さが上回った.学習時においてのみ実演する場合も,テスト時においてのみ実演する場合も,運動的体制化は起こった.これらから,異なる条件により,体制化の種類やそれによる再生法は異なることが明らかになった.

 

 

     行為事象に関する記憶の研究は大切.

     ここ20年における行為の記憶への関心 (Zimmer, & Cohen, 2001)

Ø         展望的記憶 (Brandimonte, Einstein, & McDaniel, 1996)

Ø         アウトプットモニタリング (Koriat, Ben-Zur, & Sheffer, 1988)

Ø         Engelkamp, & Krumnacker (1980)などによって開発されたSPTs課題.←本研究で扱う.

     身体と世界の相互の関係について.

Ø         記憶は知覚や行動と関係している (Glenberg, 1997)

Ø         感覚,運動,内省的な状態が合わさった形で知識は表象される (Barsalou, 1999)

Ø         知覚と行動は共通の表象媒介からなる (Ashersleben & Prinz, 2001)

 

     本研究においては行為事象記憶の表象に焦点を当てる.

Ø         SPTsVTsの違いを調べる.

Ø         SPTsによる記憶がVTsによる記憶よりも成績がよいだけでなく,プロセス自体が異なる (Engelkamp, 2001)

     記憶する際のプロセスの違い (言語 vs. 実演) が体制化にどのように影響を与えているか.

Ø         実演は,体制化を促進するのか妨害するのか.

Ø         実演による体制化は行為事象の記憶成績を上げるか.

 

1.        実演の効果

     行為事象の記憶は言語の記憶よりも成績がよい.

     実演しようとする意図の記憶でも,記憶成績は上昇する.

Ø         行為の記憶のほうが,複数モダリティ的で文脈効果も豊富.

Ø         特に運動モダリティは痕跡が強い.

Ø         意図する時の,計画,プログラム,実行など.

     SPTsに関わる先行研究

Ø         二重課題において,映像を見るより行動を行なったほうが記憶成績は阻害される.

Ø         SPTsVTsも,エピソード的に似たディストラクタに阻害される.

Ø         SPTsは,運動的に似たディストラクタにも阻害される.

     SPTsに関わる脳の先行研究

Ø         検索時における右脳の運動皮質の活動,行為>想像>言語.

Ø         SPTsVTsの活動の違い,左半球,特に頭頂部と運動皮質.

Ø         SPTsでは,テスト時にVTsとは異なり前頭葉でネガティブ方向に活性化する.

Ø         行為の優位性は,運動情報が検索の時復活するためである.

以上から,SPTsの優位性に運動プロセスが大きく関わることが分かった.

 

2.        記憶成績における行為の効果

     Koriat et al. (1998) によると,SPTsは虚記憶を減らすことにより再生成績を上げる.

測度として使われる.

 
Memory quantity・・・正しく再生した比率.

Memory accuracy・・・正しく再生した数/再生した数.

     SPTsMemory accuracyの率を増やす.

     豊富で複数のモダリティからなる記銘が原因.

     ただ聞くだけよりも,声に出すだけでMemory accuracyは増える.

 

3.        VTsSPTsのプロセスの違い

     再生量だけでなく記憶の質も異なる.

     VTsに比べてSPTsは自動的で,無意図的.←批判的意見もある.

Ø         ストラテジックかどうかを判断するのに有効な“体制化”をめぐって論争.

 

4.        行為事象の記憶の体制化:全体的な目標と予測

     行為記憶の体制化とそれが記憶成績にもたらす影響について調べる.

     再生時に思い出す順序に焦点を当てる.

     従来の体制化実験 ←実験者が主観で1種類の体制化を決める.

     本研究 2種類の体制化について調べる.

     Koriat et al. (1998)

Ø         実験者による主観的な今までの体制化は行為文において効果をもたらさない.

Ø         行為文の記憶において,運動的に似たものは体制化される.

本研究では,Koriat & Melkman (1987)が,記銘時の注意の向け方で体制化が異なること明らかにしたものと似たパラダイムを使用.

     仮説1

Ø         SPTs条件では,運動的な体制化,文条件では意味的な体制化.

Ø         反復学習によって,SPTs条件では運動的体制化のみ成績が上がり,文条件ではエピソード的な体制化のみ成績が上がる.

     仮説2

Ø         2種類の体制化があることが明らかになった上で,行為がそれらの体制化に良い影響を及ぼすかどうかを調べる.

     仮説3

Ø         二種類の体制化が再生成績に関係あるかどうか.SPTsは再生成績と体制化の相関がみられないと言われているが,運動的体制化でのみ相関が見られるのでは?

     仮説4

Ø         記憶の正確さに関しても,同じことが言えるのでは.

 

実験1

2つの条件

     SPTs条件・・・学習時にもテスト時にも行為事象文を実演.

     文条件・・・学習時には声に出して覚え,テスト時には声に出して再生.

 

実験の流れ

・セッション1・・・同じ項目について“学習−テスト”を4回行なう.

     セッション2・・・1週間後,セッション1の行為文を再生し,再び“学習―テスト”を行なう.

 

予測

     文条件・・・エピソード的類似性に沿った体制化.

     SPTs条件・・・運動行為の類似性に沿った体制化.

     文条件・・・エピソード的な体制化ができるほど,再生量も再生の正確さも増える.

     SPTs条件・・・運動的な体制化の大きさが,再生量や再生の正確さの予測変数となりうる.

     1週間後にもこれら4つの予測は成立するのか?

 

方法

・被験者・・・40(文条件・・・20名,SPTs条件・・・20)

・材料・・・33行為文(24 words からなる).Appendix参照

環境外対象物を含むものがほとんど.いくらかは,身体部分を含む.

11行為文・・・エピソード的カテゴリ (似通ったエピソード)

11行為文・・・運動的カテゴリ (似通った運動)

 

手続き

     セッション1

33の文がランダムに呈示される(1秒のインターバルと4秒の呈示)

Ø         文条件・・・声に出す.

Ø         SPTs条件・・・実演する.

実験者のほうを向き,再生.

Ø         文条件・・・声に出して再生.

Ø         SPTs条件・・・実演しながら声に出す.

同様のことが全部で4回繰り返される.

     セッション2

セッション11週間後,まずは再生テスト.

その後“学習―テスト”.

 

結果

主語と述語があっている→正答.

どちらかが間違っている,組み合わせが間違っている→誤答.

どちらかひとつしか思い出せない→誤答.

 

再生成績 Figure 1参照

     Memory quantity・・・正しく再生できた比率.

Ø         SPTs条件が文条件に比べて有意に高い.

Ø         回数とともに成績は上がる.

     Memory accuracy・・・正しく再生した数/再生した数.

Ø         SPTs条件が文条件に比べて有意に高い (SPTs条件は天井効果のため上がらない)

Ø         SPTsでは1週間後にも成績が下がらない.

Ø         文では1週間後に正確さが低下.

     反復再生について・・・誤って同じことを繰り返して再生した数 Figure 1とは関係なし.

Ø         セッション1では差なし (SPTs条件0.913 vs. 文条件0.813)

Ø         セッション21番始めの再生テストでのみ差あり (SPTs条件0.225 vs. 文条件0.625)

 

記憶体制化 Figure 2参照

     同じカテゴリが続いている回数/(再生している項目数−1)

     文条件では回数ごとにエピソードカテゴリにおける体制化が増え,SPTs条件では回数ごとに運動カテゴリにおける体制化が増える.

     文条件ではエピソードカテゴリにおける体制化が多く,SPTs条件では運動カテゴリにおける体制化が多い.

     SPTs条件は文条件に比べて,カテゴリ特定な体制化が少ない.

←エピソードカテゴリによる体制化がSPTs条件においても見られた.

 

Figure 1の再生率とFigure 2の体制化を比べて

     1週間後では再生量は減るものの,各モダリティによる体制化量の減りは少ない.

     反復効果に関しては再生量と体制化は同様のパターン.

     インターバルに関しては異なるパターン.

 

実験2

本来典型的なSPTs課題においては,学習時でのみ実演を行なう.←日常生活に合致する.

 

方法

・被験者 20名.

実験1との違い.

     テスト時には口頭で再生.

 

結果と考察

     実験1とほぼ同様の結果

     テスト時に実演するのも実演にしないのも,再生や体制化にあまり変化を及ぼさない.

     符号化で実演することが大切.

 

実験3

計画するだけでも同様の結果が見られるか

 

手続き

・被験者 60名.

・展望SPTs条件・・・後に行動してもらうので,と教示.実際は声に出してもらう.

・展望文条件・・・後に声に出してもらうので,と教示.実際,声に出してもらう.

展望文条件では4回“学習―テスト”が繰り返された.

展望SPTs条件では3回“学習―テスト”が繰り返され,半分の被験者は4回目も同じことが繰り返されるが,もう半分の被験者は4回目実際にテストで実演してもらう.

 

結果と考察

再生quantity Figureなし

     展望SPTs条件・・・41.1%62.4%76.5%

     展望文条件・・・33.6%56.4%69.9%

     反復効果有意差あり.

     条件差有意傾向.

再生accuracy Figureなし

     展望SPTs条件・・・93.2%95.4%95.1%

     展望文条件・・・91.7%94.8%95.2%

     反復効果有意差あり.

     条件差有意差なし.

 

体制化 Figure4

・運動カテゴリにおける体制化は,SPTs>文

・エピソードカテゴリにおける体制化は,文>SPTs

しかし,実験1,2ほどの違いは見られない.

SPTs条件においてもエピソードカテゴリにおける体制化のほうが運動カテゴリにおける体制化よりも大きい.

 

テストの形式によって差が出た理由 Figure 44回目参照

     テスト時に実演することにより運動的な表象が活性化される?

     運動的な部分が活性化されることにより,運動カテゴリで体制化された周辺の記憶たちが呼び起こされる.

 

総合考察

     記憶における実演効果

Ø         再生量も正確さも,文を上回る.←誤記憶も減らせる.

     実演の記憶体制化

Ø         文条件・・・エピソードカテゴリ体制化

Ø         SPTs条件・・・運動カテゴリ体制化

Ø         反復によって成績が上がるのも,文条件におけるエピソードカテゴリ体制化,SPTsカテゴリにおける運動カテゴリ体制化.

Ø         実験3では,文条件はエピソードカテゴリ体制化で反復効果見られ,SPTs条件では両方で反復効果が見られた.

     記憶体制化と再生成績との関係

Ø         体制化されているものが反復効果を見せた.

     記憶の体制化がSPTs条件における記憶成績のよさを説明するか?

Ø         体制化には種類がある.

Ø         それぞれの項目や符号化時の状態によって体制化の種類は異なるが,相反して存在するものではない.