私が本講座の一番の魅力だと感じるのは,何よりも研究活動や研究者としての成長を支えてくれるたくさんの人がいることです。今回は、この魅力について具体的に紹介したいと思います。
まずは先生方です。本講座の先生は皆,私たち院生の考えを尊重しながらも、院生の研究者としての将来を常に第一に考え、的確で丁寧な指導をしてくださいます。また本講座では,主の指導教官の先生はもちろんのこと、他の先生からも手厚い指導を受けることができます。例えば,私は発達心理学が専門ですが,神経科学を専門とする先生にも指導していただくことで、神経科学的な視点も自分の研究に取り入れることができ、研究の幅を広げることができています。このように異なる分野の先生にも常日頃から指導を仰ぐことができ、先生方も自分のゼミ生以外であっても温かく迎えてくれるのは、大講座制をとっている本講座の大きな特徴であると思います。また外国人の先生もいらっしゃることで、英語での論文投稿や学会発表についても個別に丁寧な指導をしていただき、有意義なアドバイスをいただくことができます。英語でのディスカッションが日常的に行われることによって,自分自身の英語力向上にも良い機会となっています。
次に院生のみなさんです。本講座に所属する院生の研究内容は多様であり、一人として誰かと同じテーマで研究をしている人はいません。それゆえ、院生それぞれが独自の強みを持ち合わせおり、研究の中で何か自分では解決できないような疑問や問題を抱えたときでも、他の院生の協力を得ることによって解決することができます。そして、本講座には修了者の方々を含め,優秀な先輩方がたくさんいますが,後輩のことも常に気にかけ,いつも快く相談にのってくださり,優しく,時には厳しくサポートしてくださいます。また、本講座の院生には良い意味で学年の垣根がないと感じます。先生が「大学院生は研究者の卵ではなく,プロの研究者である」とおっしゃってくださることで,それぞれがお互いを一研究者として認めており,ある分野に対して知識豊富な学生がいれば,後輩であっても意見を求める姿勢を皆が持ち合わせています。このようにお互いを研究者として尊重する気持ちが、自分自身の研究者としての意識も高めているように思います。
最後に,講座を支えてくださるスタッフの方々です。実験室や実験器具、パソコン等の電子機器の管理を始め、講座ホームページの運営などを担当してくださり,院生一人一人について献身的にサポートしてくださいます。そのおかげで、私たち院生は日々の生活を滞り無く円滑に進めて行けることができ,安心して研究に集中することができています。
研究活動は一人でもくもくと行う孤独な作業のように思われがちですが、一人では良い研究はできません。しかし,本講座では、上述したように先生方の丁寧な指導、院生のつながり、スタッフの方々のサポートに恵まれています。そして、本講座がいかに素晴らしい研究活動の場であるかは在籍する院生や修了者の方々の輝かしい業績に証明されていると思います。主体的に、のびのびと、かつ刺激的な環境の中で研究をしたいという方にとって本講座は間違いなく最高の場です。意欲ある方が本講座に進学され、本講座を一層盛り上げてくれることを心から期待しております。
(2015年6月1日UP)
私は経済学部出身で,学部時代は,人は最大利益を追求するため常に合理的に行動するという仮定の下で学んできました。しかし,卒業論文執筆のためにある地域で実地調査を行った際,人は目的のために必ずしも合理的に振る舞うわけではないこと,そして,合理的でない行動の背景には,人の「心」というものが必ず存在していることに気付いたこと,これが,心理学に興味を持ったきっかけでした。その後,数年間の社会人経験を経て縁あってここ,教育学研究科教育認知心理学講座に所属することとなりました。そこで,かつては外部の人間であった者の目から見た,当講座の魅力について述べたいと思います。
ここの講座の一番の魅力は,何といっても縦横のつながりの強さです。院生メンバーは各先生方の研究室に所属していますが,院生が作業する研究室は共同スペースとして2部屋に分かれており,それぞれの研究室の枠を超えた議論を日常的に行うことができます。こうした院生同士の縦横のつながりだけでなく,もちろん,先生方から手厚いご指導を頂けるという,先生と学生の縦のつながりも非常に強いです。また,年に2回,先生方を含め講座に所属する人全員に対して,自分の研究を発表する機会が授業として設けられています。この機会を通じて,他の人がどのような研究をしているのかを知ることが出来るだけでなく,自分の研究に対する新たな着眼点や改善点等を学ぶこともできます。
こうした内部でのつながりの強さに加え,研究環境も非常に恵まれています。私が所属する野村研究室では,脳活動を測定するために用いられる近赤外線分光法 (NIRS) や,脳活動に変化を生じさせるために用いられる経頭蓋直流電流刺激法 (tDCS) といった,脳の観点からアプローチする研究だけでなく,遺伝子解析装置を用いて遺伝の観点からアプローチする研究を行うこともできます。それだけ聞くと,心理とは程遠い生物系の分野のように感じられるかもしれませんが,近年,こうした脳活動や遺伝の観点から人の心をとらえる研究が非常に盛んになっておりますので,興味のある方は遠慮なさらず,いつでも野村先生にアポイントを取られた上で,野村研究室にお越しください。院生一同,諸手を挙げて歓迎致します。
ところで,この講座は,デザイン学大学院連携プログラムに関与する研究科の一つでもあり,私も当プログラムに所属しています。デザインと聞くと,何をするのか想像し辛いかもしれません。詳しい理念などは,デザイン学のHPがありますのでそちらをご参照いただくとして,このプログラムを一言で表しますと,現実に生じている様々な問題に対する解決方策を,他の研究科や企業の人達とともに考える非常に学際的な場です。特に,授業や講演会,ワークショップなどのイベントを通じて,他の研究科に所属する先生方や学生と交流する機会が非常に多いため,心理学だけでなく,他の専門分野についても学ぶことが出来ます。もちろん,そうした機会には,自分の研究と並行して参加することになりますので,心理学だけを専攻している人と比較してそれなりの負荷はかかります。感覚的には,ダブルスクールに近いです。ですが,多様な視点から物事を見つめてみたい,俯瞰力や領域横断的なコミュニケーション力を養いたい,自分の研究を客観的に見つめたい,自分の研究を社会に役立ててみたい,そういった気持ちを一つでも持っている方でしたら,負荷を厭わず,是非とも認知心理学講座とデザイン学との両立をして頂きたいです。こんなにも恵まれた人と環境,きっと,得られるものは千万無量だと思います。
(2015年5月30日UP)
本講座の第一の魅力は,個々の研究の自由度の高さと,自由度の高さゆえに生まれた研究の多様性にあります。本講座では,それぞれの大学院生が主体的に自身の研究テーマを決め,自身の関心に沿った研究ができます。そのため,院生のそれぞれのテーマは幅広く,様々な研究背景を持った先輩・同期・後輩とのディスカッションが可能な環境となっています。専門領域外から受ける多様な指摘やアドバイスによって,領域の枠にとらわれずに自身の研究を高めていくことができます。また,主体的に決定した課題を進める中で,先生方は親身かつ丁寧にアドバイスを下さり,各自の関心を具体的な実験や調査に落とし込み,分析・考察し,論文化に至るまでの過程を支えて下さります。
第二の魅力は,それらの様々な研究課題を検討する上で必要となる実験器具や装置の充実さです。本講座には様々な種類の実験室が完備されており,個別実験から集団実験まで,研究目的に合わせた様々な実験を行うことができます。部屋数も十分にあり,他の院生や学部生の順番を待つことなく,速やかに実験に取りかかることができます。また,fNIRSやbiopac,眼球運動測定装置,遺伝子解析装置などの器具・装置も導入されており,幅広い手法を用いた研究の実施が可能となっています。
第三の魅力は,物質的な資源に加えての,外部の研究者との交流の豊かさにあります。本講座では,定期的に国内外の著名な研究者の方々の講演が行われ,その中で最新の知見や,論文や本を読むだけでは分からない研究への姿勢やノウハウを学ぶことができます。また,外部の先生方に来ていただけるだけでなく,自身が海外の学会に参加したり,留学したりする機会も豊富に用意されています。実際,私自身先輩方と一緒に国際学会 (the 16th Annual Meeting of Society for Personality and Social Psychology) に参加し,自身の研究について発表し,海外の研究者と議論を交わすことができました。
また,本講座では,京都大学のリーディング大学院デザイン学連携プログラム (参考URL: http://www.design.kyoto-u.ac.jp/) に参加することができ,情報学・建築学・機械工学・経営学等を専攻する院生とともに,それぞれの分野の知識を用いて現代社会の問題の解決するためのデザイン方法論について学ぶことができます。異なる専門分野を持つ他研究科の院生・先生方との議論の中で,自身の研究をわかりやすく他分野の研究者に伝えることの難しさや,その重要性について実感しています。また,本プログラムの下では数々の充実したイベントが行われます。例えば修士課程1年次には沖縄,修士課程2年次には香港にて,それぞれ現地の学生と共同で現地の社会問題の解決方法について考えることで,実践的にデザインの方法論を学ぶことができます。また,毎年夏に行われるサマーデザインスクールでは,他大学の院生だけでなく,一般の企業の方々とも共同で,社会問題の解決に取り組む機会を得ることができます。現在の教育認知心理学講座は,講座内で基礎研究を行いながら,デザイン学連携プログラムにおいて応用的な視点を身につけることができるという,大変恵まれた環境にあると実感しています。
(2015年5月27日UP)
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本講座には,教育心理学や認知心理学に限らず,社会心理学や文化心理学,神経科学など幅広いバックグラウンドを持つ先生方と院生が集まっています。そのため,自分の専門分野とは少し異なる視点から,研究を見つめなおし,新たなアイデアを得る機会に恵まれています。例えば,毎週金曜日に開かれる“院コロ”と呼ばれるゼミでは,講座の先生方と院生が一堂に会し,発表者の研究内容について,それぞれの専門領域の知見も交えながら,熱い議論が交わされます。また,日々の作業を行う院生室は,所属する研究室にとらわれず,2つの部屋を共有するという形をとっているため,いつでも気軽にまわりの院生と相談することができます。
こうしたやりとりのなかで生まれたアイデアを形にしてくれるのが,充実した実験設備です。本講座には,院生室と同じフロアに大小約20の実験室があります。各部屋には,実験を行うためのPCはもちろん,脳活動や眼球運動の測定,遺伝子解析を行う機器などもそろっており,多様な実験をスムーズに行うことができます。 また,英語での発表やディスカッション,論文執筆のスキルを身につけるための授業や,海外の著名な研究者による講演会も多く用意されています。こうしたカリキュラムを通して,国際舞台で活躍するための,英語力を磨いたり,海外とのネットワークを作ったりすることができます。実際に,例年多くの院生が,国際学会での発表や,国際誌への投稿,海外留学を行っており,自身の研究を世界に発信しています。
さらに,本講座は2013年度にスタートした,デザイン学大学院連携プログラムというリーディングプログラムに参画しています。ここでは,情報学・建築学・機械工学・経営学・心理学を専攻する学生が集まり,企業や自治体とも連携しながら,各自の専門性をうまく融合させ,社会の様々な問題解決に寄与する実習や研究を行っています。また,国内外の大学と交流する機会も多くあります。私自身も本プログラムの1期生として参加しており,これまで,他領域の学生と共同した様々な活動や,香港でのワークショップ,イタリアでの研究交流事業など,非常に刺激的な経験を数多く積んできました。本プログラムに参加したことによって,心理学の枠を越えた学際的・国際的な視野を獲得できたと感じています。
以上のように,本講座には“先生方や他の院生との交流”“充実した実験設備”“国際性が身につくカリキュラム”そして“デザイン学大学院連携プログラム”と,心理学を学び,研究する上で大切な要素がすべて詰まっています。本講座への進学を志望しておられるみなさまと一緒に活動できることを心待ちにしております。
(2015年5月25日UP)
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私は別の大学から,この京都大学教育学研究科の教育認知心理学講座に来ました。所属した当初は右も左も分からず,自分の頭の中にある「何か」をどのように実現していけば良いのか悩んでいました。しかしこの講座には素晴らしい「人」や「設備」,そして「機会」がありました。それらと積極的に関わりあう事で,おぼろげながらも頭の中の何かを実現する道筋が見えてきました。これらの事について,一院生の視点から述べていこうと思います。
本講座では,日本を代表する5人の教員がそれぞれに研究室を持ち,ゼミという形で院生を指導しています。各ゼミやミーティングでの指導教官との濃密なディスカッションは,頭の中にあるものを明確に強固にしてくれます。また講座全体でのゼミでは,他研究室の教員からもアドバイスを受ける事ができます。自分野には無い発想や視点は,自分の考えを豊かに発展させてくれます。更に本講座では研究室の枠にとらわれず,院生同士が積極的に交流しています。全院生が作業する院生室での何気ない会話や,飲み会でのふとしたディスカッションが自身の研究に重要な示唆を与えてくれる事は少なくありません。このような「人」との積極的な関係性は,自分の頭の中にある何かをとても面白い方向に導いてくれます。
頭の中の発想を実際の実験に落とすために必要なのが「設備」です。本講座では一人一台のパソコンが与えられるだけではなく,豊富な実験室を使用する事ができます。通常の実験室の他に,防音室や集団実験室などがあり,自分の実験計画に合致した部屋で頭の中を実現できます。また,眼球運動計測装置や各種生理指標計測装置も豊富に導入されています。更に,各種統計ソフトや発表用の巨大タッチパネルなども配備されています。これらの「設備」を自由に使用する事で,頭の中にある何かは確実に現実のものとなるでしょう。実際,私の「文章読解における作動記憶の特徴」という漠然としたテーマは,眼球運動分析装置と組み合わさった事で新たな展開を見せました。
最後に,本講座には多くの「機会」があります。国内外を問わず,たくさんの一流の研究者が本講座を訪れてくれます。最新研究の講演や発表を聞くことができるだけでなく,各ゼミに参加してくれる事もあります。そこでは私たちの研究について貴重なコメントを下さる事もありますし,時と場合によっては共同研究がスタートする事もあります。私の研究も,イギリスLancaster University のJohn N. Towse先生や,アメリカUniversity of ColoradoのMiyake Akira先生にアドバイスを頂けました。特にTowse先生とは共同研究を行う事もできました。また海外学会への参加や,海外留学の機会も豊富に用意されています。これらの稀少かつ恵まれた機会を積極的に利用できる本講座は,自分の頭の中を更に発展させ深く実現するのにうってつけの場所と言えるでしょう。
(2013年4月1日UP)
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私が所属している本講座の魅力について紹介します。
まず、先生方は院生に親身になって指導して下さります。各ゼミでの研究発表に対してだけでなく、論文や研究費取得のための申請書などにも丁寧かつ親切なコメントをしてくれます。さらに、各研究室の垣根を越えて、他の研究室の先生方にも意見・アドバイスをもらうことができ、自分の専門領域以外からの鋭い指摘は、自分の専門領域を再度見直すことにつながっています。また、認知心理学講座では外部の著名な先生方を招くことも多く、講義や講演に数多く参加できます。論文や著書では分からない研究の姿勢や最先端の雰囲気なども感じることができますし、研究者にとって必要なネットワークも築くことができます。実際に私は、認知心理学講座にいたからこそ知り合うことができたUniversity of DelawareのBeth Morling先生の元で、2012年の夏に3か月程留学し、かけがえのない経験を得ることができました。
院生は、主体的に自ら研究テーマを選び、自分のやりたい研究を自由に行うことができます。ゆえに、院生のそれぞれの研究領域も多岐にわたっています(メンバーページを参照)。さらに、先輩・同期・後輩もみな研究に熱心で、日々熱い議論が交わされています。優秀な方々がどのように研究を進めているのかを身近に肌で感じられることは大変勉強になります。また、本講座をご卒業された先輩方が築いてきた習慣や行事なども伝統として受け継がれています。
職員の方も、煩雑な書類の書き方を教えてくれたり、研究に必要な機器の管理をしてくれたりして、研究活動をサポートしてくれます。
人的な資源だけでなく、物理的な資源にも恵まれています。実験に必要な装置や器具も充実しています。近年では、fNIRS、biopacや眼球運動測定装置、遺伝子解析装置なども講座内に導入され、より一層幅広い研究が可能になっています。さらに、様々な種類の実験室が数多く完備され、実験や調査の種類(個別実験・ペア実験・集団調査など)によって自由に使い分けることができます。
また、国際学会参加補助や英語論文校閲補助など、金銭的なサポートも受けることができます。私も、卓越した大学院拠点形成支援補助金による助成を受けて、2013年1月にアメリカ、ニューオリンズで開催された国際学会(the 14th Annual Meeting of Society for Personality and Social Psychology)に参加し、大変貴重な経験を積むことができました。
さらに、教育学研究科の他の講座や他大学などとのプロジェクトに参加するチャンスもあります。私は、2011年の11月に教育学研究科教育実践コラボレーションセンターによる北京師範大学との交流会で中国に、2012年の3月には京都大学ブータン友好プログラムによる第8次訪問団としてブータンを訪れ、自らの研究を発表し、ディスカッションを重ねることができました。社会・文化環境と心理・行動傾向の関連を研究している私にとって、日本と異なる環境に実際に行き、その違いを体感できたことは大変貴重な経験でした。
このように、非常に恵まれた環境にいることを日々実感しています。加えて、これまで述べてきたことだけでなく、私自身が顕在的に意識していないような、“あたりまえ”と思ってしまっている魅力が多々あるのではないかと思っています。本講座で研究を進められることを大変幸いに思います。
(2013年4月1日UP)
講座について:本講座は5名の著名な先生方がそれぞれ個性と魅力あふれる研究会を担当するとともに,研究室に所属する学生の指導を行うという形で運営されています。本講座の最大の特徴は,”研究領域のバラエティの豊富さ”および”研究室間の風通しの良さ”にあります。
まず研究領域のバラエティについて,ざっと列挙するだけでも心の理論・情動知能・批判的思考・文章理解・文化心理・空間認知・自己制御・ワーキングメモリ・表情認知・共感・注意機能などなど,メンバーによって研究対象は非常に多岐にわたります(詳しくは研究室メンバーの専用ホームページを参照してください)。よって,どんな基礎心理学的関心をもった人でも,(おそらく)その専門あるいは専門に近い領域の研究者とともに研究することができるという懐の深さが本講座にはあります。
また上記の特徴を最大限効率化するものとして,講座全体で共通の院生室を使用するという物理的な構造があります。各研究室のメンバーが,固まることなく2室(注ある院生室に散らばっており,どちらを選んでも個性の効いた”研究領域のサラダボウル”がそこにあります。さらに,先輩方はみなさん非常に優秀かつ親切なので,研究活動で行き詰ったことがあっても都度相談させていただける空気があります。その中で,様々な研究領域の先輩方が嫌な顔ひとつせず真剣に議論してくださり,多角的な視点でかつ質の高い指摘を得ることができるので,私もその環境に何度も救われています。このように,本講座は研究室にとらわれず,さまざまな学術的背景をもったメンバーが互いに刺激しあうことで研究の質を高めています。
野村研究室について:私が所属する野村研究室では,"Social Life Science"をテーマに,基礎心理学の枠にとらわれない非常に学際的な研究を行っています。具体的には,機能的近赤外分光装置(fNIRS)や機能的核磁気共鳴画像装置(fMRI)による脳活動計測や,脳内神経伝達物質などに関与する遺伝子の多型解析,さらには経頭蓋直流電流刺激装置(tDCS)を用いた非侵襲的な脳活動調整法などを精緻な認知課題と併用することで,生理学的・遺伝学的基盤までをも含めた統合的な認知メカニズムの解明を目指しています。特に遺伝子多型や脳刺激法を用いた認知心理学研究を行っている研究室は日本でも数少ないため,基礎心理学領域に関心があり,かつ生理学的な背景にも興味がある方にとっては,これ以上恵まれた環境はないでしょう。さらに,野村先生は非常に研究熱心でかつ親身にご指導いただけるので,みなさんのもつ独創的で未成熟なアイディアも,密な議論と精緻化した実験により最先端の研究に昇華するはずです。もちろんそのための相応の熱意と努力は必要条件です。
まとめ:本講座は,基礎心理学の探究に熱意をもっている方であればどなたでも歓迎するとともに,努力すれば世界最先端の研究ができる環境が整っています。少しでも興味のある方は,ぜひ教育学研究科棟にお越しください(先生または院生にアポをお取りの上)。講座総出でお待ちしております。
(2013年2月13日記)
私は博士後期課程を修了後,京都大学の高等教育研究開発推進センターで助教を勤めた後,現職に着任しました。追手門学院大学は中規模文系私立大学で,心理学部は1学年あたり200名強の学生と20数名の教員により構成されています。心理学部というだけあり,一つの学部に認知・脳科学,社会・犯罪,発達・教育,臨床まで幅広い領域の教員がそれぞれおり,各学年に向けた講義・演習が各領域ごとに開講される開講科目数の多い学部です。私立大学といっても規模や学部構成,カリキュラムの特徴は様々だと思いますので,ここでは以上のような点を前提に,大学教員の主な職務である教育と研究に関して,教育認知心理学講座で学んだことがどのように役立っているかをご紹介します。
教育
私の現在の学部での担当科目は,教育・発達心理学系の科目を中心に半期5~6コマです。教育認知心理学講座では,修士課程から学部生向けの実験実習でインストラクターを担当し,博士後期課程では通称「院ゼミ」と呼ばれる演習において自分の研究に学部生が参加し一緒に研究を行います。これらは就職した際の実験実習の運営やゼミにおける研究指導に役に立つ教育経験の機会となります。また授業をする際には自分の専門とする領域以外も扱うこともありますので,講座の全研究室の院生が出席し研究発表を行う演習(通称「院コロ」)で他の領域の理論や概念,研究法に触れ,自然と学んでいたことは役に立ちました。
逆に大学院で経験しにくいことは,大人数に対する講義や初年教育などの心理学以外の内容を扱う科目の運営でした。たとえば,私立大学では新入生を少人数のクラスに分け,履修登録の支援を始めとして大学生活への適応を図りつつアカデミックスキルを教えるといった初年次教育が行われているところが多いと思いますが,院生時代には,他大学の非常勤講師を行うとしても,こうした科目を任されることはほとんどなく,通常,専任教員として就職して初めて担当することになります。また,上回生向けの講義や演習なども基本的に各大学の専任教員が担当します。これらに対しては,私は上述のように大学院を修了後,高等教育に関わる職に就いたため,そこで学んだことやその当時に行った非常勤講師の経験をいかしつつ,実践しながら学ぶことになりました。
実際,各学年向けの講義や演習を学部のカリキュラムの中での位置づけを考えながら,計画し実践していくことは非常に大変でした。たとえば,教育認知心理学講座は研究者養成が中心であるため,「学校心理士」や「臨床発達心理士」といった資格を意識することは少ないと思いますが,本学の学生は資格を取得することを心理学を学ぶ際の目標とすることも多く,学年が上がるにつれ教育心理学や発達心理学と上記の資格をいかした職務との接点が見いだせるような授業内容を考える必要がありました。さらに,初年次教育のクラスマネジメントには専門性とは別のスキルが求められるのですが,初めはそれがわからず苦労しました。近年,卒業研究指導を行うゼミにおいて就職率の向上につながるような取り組みを大学から期待されることもあり,私学教員に求められる職務の幅広さを感じます。
大学院在籍中に大学教員職について考えたり,準備を行いたい場合,京都大学では高等教育研究開発センターが「大学院生のための教育実践講座」といったプログラムを開講していますので,こうした機会の活用もお勧めします。
研究
研究面では教育認知心理学講座での学びが全面的に役立ちます。
一般に私立大学では,学生数が多いため,担当科目数で比べる以上に,準備,運営,成績評価など教育にかかる負担は大きくなります。よって研究時間に関しては,当然,大学院生のときのようにふんだんにとれません。私は,現在,授業のない研修日を週に1日設定し,休日や長期休暇と合わせて,研究活動にあてています。しかし着任時は授業の準備だけに追われる日々でした。
とはいえ私立大学教員に研究活動が職務として求められないわけではありません。むしろ,外部の研究費獲得が教員評価の指標の一つとなり,科研費に応募することが学内の研究費支給の条件として課される流れにあります。
当然ですが,この点も含め研究に関して講座で学ぶことは大いに役に立ちます。講座には日本学術振興会特別研究員となっている院生が多くいるため,具体的な申請書類の書き方まで教わる機会があることや,研究費への応募が研究者としての身近な実践となっていることは非常に有益です。また,所属する研究室だけでなく上述の院コロや院ゼミなど講座内での研究発表の機会が多くあり,実験や調査を行い,発表するというサイクルが修士の頃より身につきます。
一方で,講座だけでは不十分かもしれない点があるとすれば,研究仲間の確保です。就職すれば,院生時代のように同じような研究関心を持つ人が集まっているという状況は稀です。院生の頃より,学会や研究会などを通じて学外とのネットワークも作り,就職しても継続して参加できる場があるとよいと思います。本講座の院生はこの点でも積極的に活動している人も多く,優れた環境だと思います。
(2015年7月6日UP)
私は修士課程,博士後期課程と合わせて7年間教育認知心理学講座に在籍した後,聖泉大学人間学部で大学教員として現在勤務しています。大学院卒業後の主な就職には,大学教員や研究者(もちろんその両方)を考えている人も多いでしょう。教育認知心理学講座での7年間は,大学教員・研究者の両者において必要な経験を多く積むことのできた非常に有益な時間でした。
①大学教員編
大学教員(特に小規模大学)として一番に求められるのは,学生指導の能力です。学生指導のメインとなるのが,半期または1年を通しての授業(講義・ゼミ)運営です。通常,非常勤講師としての経験以外では,授業運営の能力を磨くことはできません。しかし教育認知心理学講座では,教育認知心理学演習(通称:院ゼミ)という授業において,博士後期課程の院生が1年間学部生と修士課程の院生を対象としたゼミを運営することができます。講義だけでなく,ゼミ形式の授業に慣れることが出来るというのは,貴重な経験だと感じています。
授業運営に加えて,レポート指導も心理系教員にとっては重要です。心理系学部であれば,心理学実習の授業が存在します。また,卒論指導もレポート指導の一種と言えるでしょう。教育認知心理学講座では,学部生の実習授業のインストラクターをTAとして大学院生が担当し,そのレポートの添削を行います。添削という作業は,最初は非常に難しいものです。しかし,この添削経験の積み重ねによって,添削という作業自体への負荷が減り,実習系授業のスムーズな運営が可能となっていると感じています。
②研究者編
研究者としても重要なことを学べます。日頃周囲にいる大学院生のレベルの高さや,施設・設備が充実していることはもちろんのことです。これらにプラスして,日本学術振興会特別研究員を獲得している人が多いということも重要な点です。日本学術振興会特別研究員とは,博士後期課程の大学院生が研究に専念できるように,研究費と研究者としての給与が与えられるという制度で,科研費獲得の第一歩です。しかし,この支給を受けるためには,申請書を作成し,採択される必要があります(採択率約20%)。この申請書作成の際に大きな力となるのが,採択された先輩院生の申請書とアドバイスです。教育認知心理学講座では,多くの院生が日本学術振興会特別研究員として採択されています。つまり,お手本とするべき優れた申請書が多く存在するわけです。これは大きなメリットです。いくら研究内容が良くても,伝え方が下手では伝わりません。多くの優れた申請書から書き方を学び,それを活かしていく。これが可能な大学院はそう多くはないでしょう。
このように教育認知心理学講座には,将来を考えた際のメリットが多く存在します。しかし,この講座の本当の良さとして,“講座の居心地の良さ”に勝るものはないのではと思っています。ただ,こればっかりは経験してもらわないと分かりませんが…
(2015年4月21日UP)
1.私の簡単な経歴
私は2004年4月から2009年3月までは大学院生として,2010年3月までの1年間は日本学術振興会特別研究員PDとして,通算で6年間,教育認知心理学講座に在籍していました。その後,学振PD(慶應義塾大学)とポスドク研究員(科学技術振興機構)を経て,2014年4月から長崎大学教育学部に勤務しています。2015年4月,教育認知心理学講座を離れて5年が経ちました。その間の経験を参考に,アウトサイドから見たインサイドについて書いていきたいと思います。
2.今も昔も恵まれている点
私が大学院生だった頃は教育学部本館が建て替え前でしたが,今も昔も実験室の数が多いというのが,教育認知心理学講座の一番の強みではないかと思っています。大小さまざまな10以上の心理学実験専用の部屋を大学院生が常時自由に使えるというのは非常に恵まれた環境です。他の大学や研究室の話を聞いても,心理学実験専用の部屋は少なく,院生室や演習室と兼用で実験室として使用している部屋が多いという印象を受けます。英国のランカスター大学心理学部に1か月ほどお邪魔していたとき,そこでも実験専用の部屋が少ないので,大学院生は自分たちの研究室(2~3人部屋)を実験室として使用することが多いと聞きました。実験専用で使える部屋が多いと,自分の研究アイデアを好きなときに実行に移すことができます。それは研究者として非常に幸運なことです。
3.昔よりも恵まれている点
私が学生のときには,視線記録装置や生理反応記録装置,あるいはNIRSといった生理心理学の研究で用いられる実験設備はありませんでした。私が教育認知心理学講座を離れた直後にそれら機材が次々と導入されたような気がします。そのせいで(もっとも言い訳なのですが),私は学生時代に脳や生理についてほとんど興味を持つことなく,慶應義塾大学では自分の無学のせいで大変恥ずかしい思いをしながら過ごすことになります。自発的に興味を持って勉強すればよかったのですが,そういった装置が身近にあったほうが,それらを使った研究を勉強したり,自分でもそういった研究をしようというモチベーションも生まれやすいのではないでしょうか。現在は昔よりも多彩な研究手法が学べる場になったと言えます。今の学生がうらやましい限りです。
4.恵まれすぎている?
以上のように書くと良いこと尽くしのように見えますが,それほど単純ではありません。高度な機材を使ったいろんな研究が実現可能なので,目移りして「あれもやりたい,これもやりたい」と,自分の研究の目標を見失う危険性が高まります。また,最初から実験室と高価な機材のある環境から,それらがない環境に移ったときには自分で一から環境を整えなければいけないので,人一倍苦労することは間違いありません。私も心理学実験専用室がないときにはあの手この手で実験室を作っていましたが,最初は慣れないため右往左往して実験室を確保するだけで異常に疲れました。しかし,それが普通なのです。例えば,地方国立大に心理学専用実験室なんて良くて1つか2つ,ないのが当たり前です。だからと言って,「この研究室から出て行かない!」なんてのは駄目です。
5.温室育ちの雑草になれ
しかし,この講座は環境が恵まれているからと言って,温室でしか育たない繊細な花卉のような先輩はあまりお見かけしません。軍艦島(長崎の有名な無人島)に住んでいても心理学の研究を続けられるんじゃないだろうかと思わせるタフな雑草のような先輩を数多く輩出しています。教育認知心理学講座は比較的恵まれた研究教育環境にあり,一見すると温室のように見えますが,実は雑草のようにどこへ行っても泥まみれになりながら成長し続ける意気込みを持った人たちが集まっています。そのような意気込みを大切にできる人は,この講座で学ぶことをお勧めします。ここでの学びが外に出てからの将来の進路にとって,俄然有意義なものになると確信しています。
(2015年4月15日UP)
私は2008年~2013年に教育認知心理学講座に所属していました。設備や授業,様々な研究支援については他の方の声や紹介コーナーを参考にしていただくことにして,私は当講座で学んだことから,これから研究の世界へ第一歩を踏み出そうとしている学生さんへのメッセージを記したいと思います。
広い意味でプライミング研究が示しているように,人間はある環境におかれると,そこでの規範に沿った行動をしてしまいます。専門領域のことばかりに目を向けていると,従来の研究の枠内に収まった,狭い視野の研究に陥りがちです(もちろんそれにも研究の意義があり,悪いという訳ではありません)。今や学問領域だけでなく,社会全体が,縦割りになりつつあります。「その分野,その領域のことは詳しいけれども,それ以外のことはあまりよく知らない」そんなことがよくあります。しかし,たいていの物事は共通しています。物事をみる視点が違うだけです。領域が細分化しているのは,分けている私たちの心にあります。
これから教育認知心理学講座で研究することを考えているみなさん,あるいは現大学院生のみなさん,多くの機会と人との出会いを大切に,ぜひ自分の殻を破ってください。面白い研究とは,たいてい領域というバリアを越えたジェネラルな視点をもっています。だから多くの人に理解され,受け入れられるのだと思います。私はそういった研究ができているわけではありませんが,その視点は研究に限らず,様々な問いに対する自身の知的好奇心を満足させ,生活全般を彩り豊かにしてくれると思います。
私は教育認知心理学講座の最大の強みはそこにあると思っています。当講座は研究室間の垣根も低く,先生も学生も関係なく,フラットなつながりがあります(決して先生を軽んじているわけではありません!研究に関しては対等という意味です)。先生方の研究領域は幅広く,大学院生のテーマも多様です。ですから,指摘は常に周辺領域の視点が含まれています。この指摘が,自分の研究と他領域との関連を意識させ,他領域からみた自身の研究を振り返らせます。みんなに「面白い」「これは重要だ」といってもらえるような研究をしよう,広い視野に基づいた研究を行なおうと,自然と動機づけられているように思います。
先生方は非常に熱心に指導してくださいますが,先生に全てを求めるのではなく,他にも求めにいきましょう。講座内の他の先生や院生はもちろん,授業やゼミにもたくさんのゲストが来てくれますし,集中講義に来てくださる学外の著名な先生,海外からの研究者など,講座にはたくさんの人が集まります。こういった貴重な機会を先生方は用意してくださいます。また,学内で開かれる多くのシンポジウムやイベントも充実しています。例えば,京都大学附属図書館と京都大学学術出版会の共催で「専門外の専門書を読む」というイベントも開催されています(拙書「見えない偏見の科学」http://www.kyoto-up.or.jp/book.php?id=2017 も京大出版会から出版させていただきました)。自分の殻を破り,自分の専門性を飛び越えて,領域の本だけでなく,領域外の本も読みましょう。もちろん積極的に学外にも出かけると良いと思います。多角的な視点を獲得することが,よりよい研究,よりよい人生につながると思います。
自分のことを棚にあげて偉そうに少し大袈裟ことを言ってしまいましたが,私は当講座で学べたことを感謝しています。研究者の道へ進もうと,進むまいと,ここで得る出会いと経験はきっと先々につながります。自分の可能性を自分で決めず,無限の可能性に挑戦していってください。
(2015年4月15日UP)
1.はじめに
私は、2002年4月から2007年3月まで、教育認知心理学講座に在籍していました。その後、生理学研究所 (定藤研究室)での日本学術振興会PD研究員としての勤務を経て2008年9月に渡米し、現在 (2013年2月)にいたるまでアメリカで研究を続けています。この間、ウィスコンシン大学マディソン校心理学部Morton Gernsbacher研究室、ノースウェスタン大学教育学部David Rapp研究室、カーネギーメロン大学認知脳科学センターMarcel Just研究室と、3つの大学での研究機会に恵まれました。これらの異なったアメリカの大学に身を置いてきた経験から、京都大学教育学研究科の教育認知心理学講座の魅力をお伝えいたします。
2.講演会
私が在籍したアメリカの大学では、他大学や他学部からの多くの教員や研究員が訪れ、頻繁に講演会が行われていました。キャンパスの環境が良い大学では、特に多くの講演会やセミナーが開かれていたように思います。ある大学のキャンパスはリゾート地のように美しく、研究者を家族で招待し、教員として迎え入れるオファーを出すこともあると聞きました。
教育認知心理学講座でも、講演会や集中講義などが多く行われ、学外の著名な研究者による多彩な分野の最先端のお話を聞く機会が多くありました。京都という土地の魅力も手伝っているのでしょうか、海外の著名な研究者も多く来日されますので、講演会や海外の研究者との交流機会の多さは、教育認知心理学講座の大きな魅力の一つだと思います。
3.研究スペース
研究スペースに関して、私が在籍したアメリカの大学では、それぞれ個別の机とデスクトップPCが貸与され、共同部屋 (大学院生とポスドク研究員がシェア)で研究をしていました。ある大学では実験室の一角に大学院生の机が置かれ、論文執筆に集中するのが難しそうでした。
広さの違いは多少あるかもしれませんが、教育認知心理学講座も大学院生とポスドク研究員が部屋を共有して使っています。大学院生は、疑問点などを、ポスドク研究員や他の大学院生に聞くことができますし、研究内容に関してディスカッションするのに便利ですので、同じ部屋で研究できるのは良いことだと思います。
4.実験室と研究設備
実験室に関して、私が在籍したアメリカの3つの大学はどこも手狭で、混んでいました。つまり、実験をするには部屋の競合が起こり、待たされてしまうこともありました。また、脳波(EEG)を取るには別の階、磁気共鳴画像(fMRI)実験をするにはバスで1時間かけて別のキャンパス、遺伝子解析をするには別の学部あるいは別の大学、といったように、リソースが点在しているという問題点がありました。
教育認知心理学講座が持つ実験室の数は多く、ポスドク研究員、大学院生、学部学生が卒業論文のための実験を進める上でも、競合をしたり、長く待たされることはなさそうです。実験室の数だけではなく、研究設備も非常に充実しています。一つの講座内で、反応時間取得、眼球運動測定、音声解析、表情分析、近赤外光や磁気刺激による脳計測、遺伝子解析まで行える講座は、日本のみならず、おそらく、世界でもまれでしょう。教育認知心理学講座は、実験室と研究設備に関して、世界トップクラスの充実度であるといえます。
5.研究スタンス
最後に、私が在籍したアメリカの大学と、教育認知心理学講座との最も大きな違いについてです。アメリカの研究を志向する大学(研究大学)の多くは、教員の研究費のもとにラボが運営されます。つまり、研究室のトップの教授が、そのラボの研究を決めるので、学生が自分で選んだ研究をテーマに学位論文を書けるとは限りません。
それに対して、教育認知心理学講座では、自分の研究は自分で選び、自分の責任で行われていました。テーマが与えられるのではなく、自分の力で研究課題を発見するのです。自主的に選んだ課題に応じて、教員やポスドク研究員、先輩や同期、後輩の大学院生の方々から、きめ細かいご指導、惜しみない助言、将来の糧となる難しい質問をいただけるでしょう。私自身、教育認知心理学講座での大学院生時代に、自分の関心に合ったテーマを存分に研究させていただきました。ご指導をいただきました講座の先生方、先輩の皆様、いつでもディスカッションに付き合ってくれた同僚や後輩の皆様に心より御礼申し上げます。
以上のように、教育認知心理学講座は、講演会の頻度および質や、研究スペースにおいて、アメリカの有名な研究大学と同程度の充実度を誇っています。実験室と研究設備については、世界の水準を凌駕しています。研究スタンスについても、自分の行いたい研究を行うことができるという意味で、非常に魅力的です。世界トップクラスの研究環境で、第一線の研究者たちと、国際水準の研究をしてみませんか?
(2013年4月1日UP)
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