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ものしり百科2

デジャブはどうして起こるのか?

デジャブはどうして起こるのか、教えてください。

(青森県・hanako)
 

過去の「似た経験」が記憶から「自動的に思い出される」働き


 「デジャブ(デジャビュ)」即ち「既視感」というのは、「ある場所を訪れたり、人と会った時に、初めてなのにもかかわらず、強い既知感や懐かしさを感じること」です。

 以前は、妄想や幻覚などの多様な症状を示す「統合失調症」の発病初期や「側頭葉てんかん」の症状として現れることも少なくないことから「精神疾患」や「脳疾患」などが原因となる「記憶異常の問題」と推測されていたこともあるようです。

 しかし、認知心理学を専門としている京都大学・大学院教育学研究科の楠見孝教授の話によると、「デジャビュ現象は、調査の結果では7割くらいの人が経験していることから、決して特殊な経験ということではないと思われます」とのこと。そして「記憶異常現象ではなく、人の認知における『類似性認知メカニズム』の働きによって生じる現象」と考えられるそうです。

 例えば「場所についてのデジャビュを引き起こすのは、並木道、古い町並み、公園が多いのですが、こうした光景はどこも類似しているため、何度も反復して経験することによって、記憶が重なりあい、細かい部分が忘れられて『典型的光景』が形成されることになります。つまり『既視感』は、過去の経験である典型的光景が、眼前の光景と似ていることによって引き起こされると考えられるわけです。また、このとき、どの過去の記憶かが特定できないので、不思議な気分が起こるわけです」

 一方「人についてのデジャビュは、行きずりの人に対して起こることは少なく、初対面の同級生のように、パーソナルな関係の開始時に起こります。そして『よく似ている』原体験となる人物は、しばらく会っていない昔の同級生や遠い親戚のように知人程度の人が多く、外見や雰囲気も含めた全体的な類似性を持っています。これは『漠然としたイメージ』が似ていることによるものと思われます」

 つまり「デジャビュ」とは「現前の光景と類似性の高い光景を長期記憶から自動的に思い出すプロセス」に関わり、これらは「人の記憶は似ている出来事同士が強く結びついていること」さらに「人は、目の前の風景や人と似ているものを記憶から探し出すことに優れている」ことから生じる現象と考えられるそうです。

2009年11月12日 読売新聞)